もっと2月を!


普通一ヶ月は30日か31日ありますが、 2月だけは28日、閏年でも29日しかありません。 こう決まるまでにはいろいろな歴史的経緯があるようですが、 一ヶ月を単位とする仕事に就いている人(たとえば月刊誌の編集者や執筆者) にとって締切がいつもより2〜3日早くやってくることは大変な負担です。 また経営者は従業員の2月分給料を他の月と同じだけ払わなければいけないことに怒りを感じ、 従業員は従業員で30日あるいは31日も働いている月の給料が28日しか働いていない月の給料と同じなのは許せないと思っています。

このような状況を改善して皆が幸せになるためには、 2月の日数を他の月と同等レベルまで引き上げるのが一番です。 幸い、両隣の1月と3月はどちらも31日までありますから、 彼らが自由・平等・博愛の精神に基づいて1日ずつを2月に寄付すれば、 すべての月は30日か31日となり、 不公平感はぐっと少なくなります。

と、まあここまでは誰でも思い付くのですが、 ではそれを実際に実行している国なり組織があるかというと、 そんなものは存在しません。 その理由は一重に、 現在の暦と間に互換性がないからです。

具体的に説明しましょう。 1月と3月を31日、2月を28日とする現在の暦を慣例どおりグレゴリオ暦、 1〜3月のすべてを30日とする暦を平等暦と呼ぶことにします。 すると、これら2つの暦の間では以下のようなずれが生じることになります。 (説明を簡単にするため、閏年のことは今は置いておきます。)

グレゴリオ暦平等暦平等暦を導入すると
1月30日1月30日ここまで問題なし
1月31日2月1日一日早まる
2月1日2月2日一日早まる
一日早まる
2月28日2月29日今までにない日付
3月1日2月30日今までにない日付
3月2日3月1日一日遅れる
一日遅れる
3月31日3月30日一日遅れる
4月1日4月1日やっと問題解消

つまり、2月と3月はグレゴリオ暦と平等暦の間で1日のずれが生じるのです。 しかもその1日が前にずれるのか後にずれるのかが、 2月と3月では反対になっています。 もちろんある日を境に、 地球上のすべての暦を一気に平等暦に切り替えることができるのなら問題はありません。 が、現実問題としてそれは不可能でしょう。 しばらくの間は、 グレゴリオ暦と平等暦の両方に対応する必要が生じると考えるべきです。 そしてその場合、 互いに異なる暦を使用している社会の間のコミュケーションにおいて大混乱が生じるのは目に見えています。 いくら平等暦が優れていると言っても、 このような問題があるうちは採用がためらわれるのももっともです。

ところが最近、私はこの問題を解決する素晴らしいアイデアを思い付きました。 毎月が1日から始まるというのは、 FORTRANプログラマ的固定観念に過ぎません。もっとフレキシブルに、 2月は0日から、そして3月は2日から始まると定義すればどうなるでしょう。 これを修正平等暦と呼ぶことにすると、 月日の対応は以下のようになります。

グレゴリオ暦修正平等暦修正平等暦を導入すると
1月30日1月30日
1月31日2月0日今までにない日付
2月1日2月1日
2月2日2月2日
2月28日2月28日
3月1日2月29日今までにない日付
3月2日3月2日
3月31日3月31日
4月1日4月1日

両者の間で喰い違いが生じるのは「1月31日 = 2月0日」と 「3月1日 = 2月29日」のわずか2日だけになります。 しかも、グレゴリオ暦には「2月0日」も「2月29日」もありません (今は閏年以外の話をしています。閏年に関してはこのすぐ後で説明します)。 ですから、 もしそんな日付が出てきたらそれは修正平等暦の日付であることがすぐにわかり、 同時に対応するグレゴリオ暦の日付も知ることができます。 同様に修正平等暦にとって「1月31日」「3月1日」はありえませんから、 これらがグレゴリオ暦の日付であること、 およびそれに対応する修正平等暦の日付もすぐにわかります。

さて、閏年の場合はこうなります。

グレゴリオ暦修正平等暦修正平等暦を導入すると
1月30日1月30日
1月31日2月0日今までにない日付
2月1日2月1日
2月2日2月2日
2月28日2月28日
2月29日2月29日
3月1日2月30日今までにない日付
3月2日3月2日
3月3日3月3日
3月31日3月31日
4月1日4月1日

この場合も両者の間で喰い違いが生じるのは「1月31日 = 2月0日」と 「3月1日 = 2月30日」の2日だけです。 またこの2日に関する日付の相互変換も、 非閏年の場合と同様、極めて簡単に行うことができます。

もしかしたらこれをお読みの方の中には 「閏年におけるグレゴリオ暦の2月29日と、 修正平等暦における一般の2月29日が混同されるおそれはないのか」 と思った方がいらっしゃるかもしれません。 結論から言うと、それは取り越し苦労というものです。 まず閏年の場合ですが、 上を見ればわかるとおり2月29日はどちらの暦においても同じ日です。 ですから何も問題ありません。 次に閏年以外の場合ですが、 グレゴリオ暦の非閏年に2月29日が出てきたということは その時点ですでに何かが間違っています。 おそらくは年を取り違えていると考えられますから、 今更1日くらい前後したところで手遅れであることに変わりはありません。 潔く諦めましょう。

と、このように多くの利点を持った修正平等暦ですが、 一つだけ問題点があります。 もしこの暦が採用されると、 現在子供に小の月を覚えさせるために使っている 西向く侍 = 二、四、六、九、十一(士) という語呂合わせのフレーズが使えなくなってしまいます。 修正平等暦では5,7,8,10,12月が大の月で31日まで、 残りすべてが小の月で30日までとなります。 何かいい覚え方を思い付いた人は、 ぜひこっそりと教えて下さい。 よろしくお願いします。


最終更新日 : 2006年6月19日